F.A.Network


概要
川部一郎はエイズをはじめ数々の社会問題をきっちりととらえた硬質の脚本を提供しつづけている。もっと注目されてしかるべき劇団であるといえよう。和田京子が可愛い。

構成員
主な作家
川部一郎
主な演出家
川部一郎
主な役者
川部一郎
高仁和絵
安田英一
井上真愉見
和田京子
福田潔
源五郎
菊池一浩
主なスタッフ
劇団の公式ホームページ
不明(たぶんない)

過去の公演

劇団リストのページへ

FEN,THE END (90.9)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network Vol.1 「FEN,THE END」9月28日7時(1:30')
駒場・アゴラ劇場03-467-2743 前1800円、当2000円 9/27〜10/1
作/グリマーウォントン 演出/川部いちろう 問03−369−8540
客70(7割) 男:女=3:7

およそ20年後の未来、管理の強化された社会でのひとつの事件を描く。
すなわち、友人の退学の取り消しを求めひとり立ち上がった高校生が、教
師を人質にして学校側との交渉を画策する。偶然友達が集まってしまった
ところへ、国家機密物質を盗んで追われている一人の女革命家が逃げ込む。
周りを警察に包囲され、友達が撃たれケガをする。そして・・・。ハード。
最近の管理教育のほころびや、管理社会から考えられる地続きの未来を、ド
ラッグ、酸素、文字テレビ、海賊放送、個人データ照合、特別指定生徒な
どの風俗アイテムをからめて描く。かつて演劇で近未来がはやった時、核
戦争後など、まったく別の次元のものばかりであったが、これは現代を反
映している点でスルドイ。劇作の部分は、かなり古い作りで惜しい。

見終わって「ストーンズやブルーハーツのノリは違うんじゃ。管理を逃れ
る唯一の道は、レジスタンスじゃなく、コンピュータとネッ
トワークによると考える私はギブソンかぶれです。」



BLOOD!BLOOD! (91.5)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network「BLOOD!BLOOD!」5月6日2時(2:05'-10')
中野富士見町/planB 前1800円、当2000円 5/4〜9(8ステ)
作/グリマーウォンタン 演出/川部いちろう 03-3369-8540 客50(9割)

・・・馬場千登勢は出ない。

(「AIDS撲滅キャンペーン計画」の詳細/厚生省事務次官)
全国民に抗体検査を実施させ陽性陰性の別を得るため、厚生省内にキャンペー
ン特別室を設ける。この際、より効果を上げるため、ある厚生省職員の妻を、
抗体陽性患者により強姦し陽性化させる。その職員を室長に抜てきし、検査の
重要性を訴える。

(キャンペーンの経過)
陽性患者はもちろん、抗体陰性カードを持たない人も激しい差別を受け、日常
生活にも支障を来たしている。その結果、陽性患者が隔離され、国内の特定地
域に集められつつある。厚生省としては、より隔離が進むまで差別反対運動は
しない方針である。なお妻が陽性となった職員は離婚したが、局長に出世し、
職務を全うしている。

(キャンペーンの完成)
AIDSに対する国民の無知さが差別を生んでいることは明確であるが、それ
による隔離効果は大きく、新たな患者の増加を防いでいるのは事実である。血
液製剤輸入の指導ミスによる患者増加の問題は、表面化していない。妻が陽性
となった職員は、その理由を知りえた模様であり、危険な存在となっている。

見終わって「無関心が美風のこの国では、あまり問題となっていないAIDS
を正面から捕え、スルドイ。多くのことを言い過ぎ、終盤が弱い。
一点に絞って叩いて欲しかった。でも、なかなか面白かったぞ。」



HUMAN GOD (91.12)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network Vol.3「HUMAN GOD」11月30日3時(1:47')
新宿/スペース・デン 前\1800 当\2000 11/29〜12/2(6ステ)
作/グリマー・ウォントン 演出/川部いちろう 03-3369-8540 客30(5割)

まだ第3回公演なんですね。小丸はたまたま3回とも見てるんですが、毎回、
全く違った雰囲気の芝居を作る手腕に感心してしまいます。今回は「宗教」。

物語は、一人の女性が新婚旅行への機上で、彼女にしか見えない存在に、飛行機
が墜落することと、彼女が無傷で助かることを告げられるところから始まる。世
界を救うため、彼女は神に選ばれたのだ。その後、彼女は神の指示に従い、冬季
オリンピック会場建設予定地に、彼女達の聖地としての集合体を作る。一方、宗
教をビジネスとして計算づくで行なう男女と、やはり打算で生きるTVキャスタ
ーが彼女に興味を持ち接近する。パターン通り迫害を受け、権力により排除され
る彼女達。そして誰もいなくなった・・・。

小丸がこの芝居のへたな演出のエンディングにも関わらず涙が止らなかったのは、
次のように感じたからだ。「神様、お願い」とか言って、神が救ってくれる、っ
て思う人間って甘いよね。神が救うのは、神様自信が作った世界をであって、神
様だって自分が大事なはずだもの。もし神がこの世界を救おうと思った時、人類
を残そうと考えるんだろうか? 神様に残してもらえる存在かしらねぇ人間って?
僕には確信が持てないよ。

見終わって「イマイチ冗長だけど、主演の和田京子が可愛いし、私は共感する。」



covered (92.5)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network Vol.4「covered」5月14日7時(1:37')
駒場/アゴラ劇場 前2000円 当2200円 5/14〜17(6ステ)
作/グリマーウォンタン 演出/川部いちろう 03-5343-0740 客60(6割)

小丸が旗揚げからずっと見ている劇団である。素性は知らない。どうもニナガワ
カンパニーと関係があるようだ。終演後に外で松重豊に会った。普通の大きさだ
った(^^;)。

何がすごいって、4回とも全く違うネタ・雰囲気を提示していることだ。1回目
が「管理教育」で次が「AIDS」、3回目が「宗教」で今回が「マニュアル恋
愛」だ。ニナガワカンパニーの二人が客演している。

●あったしはさぁ、別にいいんだけどぉ、彼ったらオタクよねぇ。ゲームソフト
作ってるんだけど、お給料がいいからぁ、趣味ったら「車とマッキンくん」ぐら
いでぇ、貯めてるのよねぇ。ゆくゆくはちゃんと結婚したいしぃ、彼もそのつも
りだしぃ、バレンタインディにはチョコあげるのぉ、もらったことないんだって。

○ボ、ボクは別にいいんです。その、彼女は水商売でも。あい、してくれてると
思ってますから。んと、彼はご近所です。山登りにさそわれてんの。えっ、名前
ですか、知りません。ちょっとゴミ捨て場で知り合っただけですから。燃えるゴ
ミの日に缶とか瓶とかが出てて、困ったなあって思ってたら彼が集めて持ち帰る
んです。手伝ったら知り合いになったんです。うまくソフトが作れなくって。

◎嫌いなんだよ、人に合わせんの。僕は彼女を愛してたんです。死んだらお互い
どうしようねって言ってて、僕は彼女を食べてやるって約束してたんです、愛し
てましたから。彼女も食べて欲しいって言ってました。そして自殺したんです。
ええ、もちろん食べましたよ、愛してましたから。しごく自然な行動ですよ。あ
なたはないですか、愛してる人を食べたいって衝動。今は幸せです。

●結婚してぇ、子供ができてぇ、お家を買ってぇ、ご近所づきあいしてぇ、お休
みにはハイキング行ってぇ、幸せよねぇ。今日もこれからデートなのぉ、お食事
してぇ、お酒のんでぇ、うふふふふっ、幸せよねぇ。愛してますから。

○最初は驚きました。そんな、人を食べるなんて。でも、うらやましいかなって。
そこまで愛せるかなって。いえっ、もちろん、それが愛なのか疑問ですけどね。
そーゆーの愛って言うんでしょうかね。わかりません。考えたこともありません。
考えたくないです。普通に結婚して子供作って、生ゴミ出して、ファミリーレス
トランで食事して、オーダーして、オシボリもらって、コーヒーおかわりして。

◎キミはこっち側の人間かと思ったんだよ。愛してるから別にいいんだよ。ああ、
あの子はね、僕を食べたいって言うんだ。たぶん、愛してくれてるんだと思う。
でも僕はねぇ・・・。食べたいと思わないから・・・。ホント、キミハコッチガ
ワノニンゲンダトオモッテイタ・・・。また電話します。いつか山に登ろうね。

マニュアル通りの恋愛や価値観を、アブノーマルと位置づけられる価値観を強調
することで、その危うさを暴いていく。かつての3作に比べ、淡々とした展開が
時に恐怖を誘う。でも、笑える。役者のレベルが上がったねぇ。後半にもちっと
展開があった方が楽しめたと思うが、たぶんあえて抑えたんだろう。わかる。で
も、なんか局面の変化があっても良かったと、あえて言いたいな。

毎作毎作、楽しみだ。ホンが楽しいもの。和田京子は大人になった。

見終わって「次も期待している。エンディングがなあ・・・・。」



THE FAKE TRUE (93.2)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network Vol.5「THE FAKE TRUE」2月7日2時(1:40')
駒場東大前/こまばアゴラ劇場 前2000円 当2300円 2/4〜8(7ステ)
作/グリマー・ウォンタン 演出/川部いちろう 03-5343-0740 客70(7割)

(1993/2/10)write

社会的なネタを川部氏の個人的な関心の範囲で料理する劇団だ。過去4回の公演で
は「管理教育」「AIDS」「宗教」「マニュアル恋愛」が俎上に乗っていた。今
回は「太平洋戦争と私」である。

●売れっこアイドルタレントである秋川あきほは、昨日の「婚約発表緊急記者
会見」の席を、自らの祖父である秋川菊三氏の戦争犯罪についての告白を行
なうという異例のものとした。これは当初から予定されていたものだという。
当日配付された資料「秋川菊三と7人の五十年前の真実」(新宅幸雄著)に
よると、太平洋戦争初期において、インドネシア・スマトラ島東部のカリマ
タ諸島の小島に駐留した日本軍は、蛮行の限りを尽くし、当時の東南アジア
の各地で行なわれたお定まりの略奪と暴行により、この村は消えてなくなっ
たという。生き残りである一人のおばあさん(暴行を受けた当時は13才)
の証言と、頭部と胴体の離れたものもある250体程の白骨(日本の某観光
会社が買収しリゾート開発を行なった建設現場から発見された)が、すべて
を物語っているということである。駐留した8人の写真もおばあさんが持っ
ていたという。この部隊を率いていたのが秋川菊三氏である。戦後50年を
経た今日における裁かれなかった戦犯の存在意義を含め、部隊8人の中に現
衆議院議員が含まれていることの信憑性についても論議を呼びそうである。

ちゅーことで、この記者会見に至る、少女の葛藤、家族の困惑、タレント事務所の
思惑、ルポライターや雑誌編集長のかけひきをからめて描いている。現代の南の島
のリゾート地におけるギャルの生態を挿入することで、対比させている。

前作「covered」でもカニバリズムの特異性が注目され、そっちの話しに話題が集中
したけど、やっぱ中心は「マニュアル恋愛」だったと小丸は思っている。それは挿入
された「ファミリーレストラン」のマニュアル化された対応の存在で理解されると思
う。今回の作品も、編集長やマネージャーの葛藤や、ルポライターの権力に対する抵
抗などの印象が強いので目がそっちへ行きそうであるが、やはりテーマは「過去との
対峙」であり、「太平洋戦争と私」だと思う。それは挿入されたギャルのアーパーぶ
りで理解されるもの。南の島に対するギャルの認識と、川部氏が思い至った歴史との
落差が本作のエネルギーだと思う。この劇団は「社会派」ではない。個人的な思いの
表現にすぎなく、わかりやすさにおいて、小丸は共感するものである。

しかし毎度のことながら、演出がオーソドックスである。こーゆーのを「芝居を壊し
ていない」というのだ。あたりまえの演技であたりまえに作っていて、キャストは説
明にすぎないの。芝居は「その先」があるのにね。一旦、あーゆーのを作って、それ
からどんだけ「壊せるか」が問われるはずなのにぃ。ちゃんと壊している役者は菊池
(編集長)さんだけだ(ちょっとあざといけど)。赤崎さんも少しやってるけどね。
その結果、この編集長とルポライターがらみの印象が強くなるんだ。

エンディングは演出家のダンディズムだろうから、そりゃしょーがない。でも、演出
家の思いがあのエンディングで伝わっているかと言えば「否」だろう。ハデなバック
サスとか、スネークアウトとか、盛り上がり音楽とかで終わればいいってもんじゃな
いけど、もうちょっと工夫してくれよぉ。見上げて、「客電がついてるから終わり」
って気がつくのって、間抜けだ。「終わり」は必ず来るのだから。

菊三の従順な妻がダブルキャストで、私が見たのは小林ゆかりの方。キャスト表によ
ると、この妻を井上真愉見がやる時は、菊三と妻の「関係」が変わるらしい。確かに
井上は、単なる従順な存在にしては自己主張するタイプだで、「秘めたる思い」にな
ることだろう。こっちも見たかった気がする。

前作時に影介さんをして「かわいいですぜ、旦那。」と言わしめた和田京子は、やっ
ぱええで。至近距離に来るとドキドキしてる小丸は、おぢさんだ。

見終わって「もっともっとぶっこわして欲しいだに。」



BLOOD!BLOOD!-Remake(93.6)

(下の文章の文責:まねきねこさん)


6/6(日)7:00:00 文芸座ル・ピリエ   F.A.Network
       「BLOOD!BLOOD!-Remakev 作・演出:川辺いちろう 1列中央

   硬質で、切れがある。ふざけたところが無いのも良い。短い場面を
  陰影ある照明を背景に、小気味よくつないでいく。おお、かっこいい・・・。
   厚生省役人の夫と妻、国家キャンペ-ンの策謀で、AIDSワクチンを打たれる妻
  (和田京子)。HIV陽性者の町「桃源郷」。暴露。復讐。国家の勝利。
   妻の背後に常にいるアレ=HIV(赤坂克彦)を配した演出もうまい。
   設定が釈然としない、役者の巧さがもう一つなどを排して、見せる巧さ。
   あと、AIDS関係の資料が、4P分配布。作り手の熱意と誠意を感じる。 
   しばらくぶりに、好きな芝居を発見した夜でした。
6/7まで。


THE WITNESS (93.11)

(下の文章の文責:まねきねこさん)


11/13(土)2:00-3:30PM 曇|雨 中野富士見町・PLAN-B F.A.Network
 「THE WITNESS」 作・演出:川辺一郎  客席5割

 別件逮捕。謀議。きっちり硬質のホンと演出で。なかなかっす。

 お話し。ペット殺害で別件逮捕。老女殺しのえん罪をうけた男。その男の
 アリバイを証言しようとする者への圧力。と、かれらの屈伏。を淡々と。
 手堅く、しぶいっ。浮ついたとこがなく、適度の緊張感とテンポ。
 音楽なし。SEかすか。ほとんど一灯のみの抑制したあかり。
 背面にもってきた鏡には、影をもった表情。かっこい。
 これで、役者にもっと剛性があればなあ。

 気になる事。二つ。警察の手口がわざとらしい。ちと。劇では時間がない
 からか。もっとも、刑事が実際現れたら、多少変でも信じるだろうけど。
 あと。問題はえん罪男。罪を晴らす手間と、えん罪の代償を天秤にかける
 クールな奴。というか、人間性が欠けてる。たとえば、ペットも老女も
 殺すのは一緒とか・・。ぶるる。実在しそうだ。背筋にひやりねこ。

 和田京子は、ちと浮いた印象。他の出演者が暗いせいか。かわいらしいのは
 変わらず。うれしねこ。



BLOOD SUCKER


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【 BLOOD SUCKER 】  F.A.NETWORK
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血液製剤によるエイズ感染を扱った作品。血友病の患者がエイズに感染し、
妻を失い周囲の誤解に苦しめられながらも、裁判の原告として立ち上がる
までの姿を、両親・妻・友人・医師・製薬会社プロパーとのかかわりの中
に描く。時代の風俗やエイズ情勢を交えつつ、時間を追って場面を重ねて
ゆくわかりやすい構成。舞台の使い方も固定セットでシンプル。問題提起
をはらんだ作品ではあるが、社会的正義を盾にした非難弾劾に走ることが
なく、個人個人の想いに重点を置き、それぞれの立場を説得力あるものと
して描いており、そのことが人間ドラマとしての魅力を生むと同時に、問
題の見据えるべき本質をかえって鮮明に浮き上がらせている。主役の川辺
を中心に、役者も好演しており、なかなかの秀作。
======================================================================
8/14 マチネ                 萬スタジオ すでに終了


● なかなかみごたえのある作品です。社会派なんだけど、それ以前に優れた
人間ドラマでもある。こういうのは(も、か ^^; )好きです。

● 「知らないことは罪だよね」という育夫(主役の青年)のことばがすごく
重く残りました。知らぬが仏というのは時として安直なヒューマニズムの
逃げ口として使われ、それがさらにひどい事態を招くことがあります。そ
れでも怖さゆえに、知ること、知らせることから皆で逃げ回ってしまう悲
しさ。妻の佐和子の純粋な愛情と並んで、姉の和子のみせる「事実を見据
えること」への勇気ある姿勢が、大きな救いであり、示唆になっているよ
うに思いました。

● 役者では、主役の川部を中心に、高仁・安田・井上・和田の家族、福田や
源も好演していたと思います。医者の竹内役の菊池が、若くて長髪で派手
な服装で軽薄なしゃべり口という役作りだったのですが、これにはやや違
和感を覚えました。もっと誠実さを前面に出した方が、苦悩がよくみえて
よかったのではないかと思います。

● 和田京子の出番が少なかったのは残念です。もっと魅力を引き出してあげ
ないともったいない。もっとみせろー。(^^;

● 客席がガラガラでした。こんなにいい芝居なのに……。
横浜公演はどうだったんでしょう?

= 次回作は? = 「情報ナシですが、是非みたいと思ってます。」

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  作・演出:川部一郎
  出演:川部一郎(育夫)高仁和絵(姉)安田英一(父)井上真愉見(母)
和田京子(妻)福田潔(友人)源五郎(プロパー)菊池一浩(医師)
  1994.8.13-14 萬スタジオ 全自 8/14Sun マチネ 客席:2〜3割?
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(下の文章の文責:まねきねこさん)


8/14(日)2:00-4:10PM  晴 大塚・萬スタジオ F.A.Network
 「BLOOD SUCKER」 作・演出:川部一郎   客30人?

 血友病患者のHIV感染問題。押えられた恐怖、怒りを淡々とドライに。

 現実の社会問題を、淡々と硬質な印象の舞台にのせるF.A.Network。
 BLOOD TALKS('93-6、'91BLOOD!BLOOD!再演)に続き、エイズ問題と社会を描く。

 お話し。とある地方都市。血友病患者の青木(川部一郎)は、医者が薦めるままに
 アメリカから輸入された血液濃縮製剤を使い始める。やがて、結婚、妻(和田京子
 )には子供が。しかしその時、すでに夫婦はHIV感染していて・・。
 79年から未来の95年まで、主人公とその家族の日常を中心に描く。

 医師を含めて、無知ゆえの恐怖と罪が、静かに浮かんで来る。確かで小気味よい
 構成、感情に走らないドライさ。いつもながら巧い。お客の少ないのが残念。
 BLOOD TALKSは、権力の謀議などいれ、ドラマ性がある反面、現実味が?だった。
 今回は、リアルで○。パンフも、背景の資料として詳細。誠意を感じる。
 何にせよ、知らなかったではすまされない。ねこも、患者達の勝訴を信じたい。
  
 いきなりミーハーですが。ベビーフェイスでなかなかかわいい和田京子。セーラー
 服で、最初出た時はちとどっきり。しょうがないおやじねこ。


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network Vol.9「BLOOD SUCKER」8月14日7時(1:59')
大塚/萬スタジオ 前2300円 当2500円 8/13〜14(3ステ)
作・演出/川部一郎 客40(5割)

社会的な問題をテーマに上演するこの劇団が過去8回の公演で扱ったものは・・・
「管理教育」「AIDS」「宗教」「マニュアル恋愛」「太平洋戦争と私」「AI
DS再演」「冤罪」「放射能」。そして今回は「AIDS再々演」である。

たった3ステージの公演。小屋代がメチャ高い萬スタジオで、3回の総動員数は
100人ぐらいみたい・・・。だいじょーぶかよー。

さて、小丸は前2回のAIDSネタを見ていまして。最初のは、エンタテインメン
トしちゃってて、厚生省の役人が銃を持って大暴れしちゃうやつ。ベッドシーンは
あるは、和田京子の強姦シーンはあるはで・・・。

再演では、グッと抑えて、「AIDS患者隔離村」という・・・。斉藤聡介の患者
モノローグが効果的で、HIV感染そののにより近づいていた。

そして今回。過去の2回があくまでフィクションであり、意図的な過剰さによるオ
シバイであったのに対し、今回は「係争中の一連のHIV訴訟」とストレートに対
峙しています。川部さんの「原告の勝利に終わることを信じたい」というスタンス
が明確に示されます。

とりあえずは芝居としての感想ですが、傑作です。丁寧に作られてます。丁寧すぎ
て説明的ではありますけど、やっぱこーゆーのは「書き込み」たくなるもんですの
で、しょうがありません。

●1979年 血友病患者のイクオ君18才。田舎町の病院で画期的な新薬を薦めら
れる。田舎もんの両親と田舎もんのイクオ君は、大喜び。非加熱製剤使用開始。
レゲエを聞き始める。

●1983年 イクオ君22才。喫茶店を始める。新薬のおかげで活動的になる。1
年前にナンパした女子高生と結婚。イクオ君のいいかげんな性格が幸い。結婚
式の当日の新聞に、AIDS問題と非加熱製剤、血友病の関係が載るも、イク
オ君はお気楽に初夜を燃える。両親と姉(看護婦)が不安。ボブ・マーリーを
聞きまくる。

●1986年 イクオ君自身はAIDSのわけがないと信じる。妻、妊娠。医師が妻
だけに、彼女がHIVキャリアであることを告げる。妻、交通事故死。スカを
聞き始める。

●1990年 イクオ29才。妻の死後、すぐにAIDS検査を受け、自身がキャリ
アであることを知っていたが、この年、HIV訴訟の原告となる。まわりの人
をちょっと憎む。母さんに泣かれる。

●1995年 イクオ34才。中南米を放浪。生のレゲエを聞きたかったのに、彼の
地ではラップばかりでショックを受ける。ぼちぼち日本に帰ろうと思いながら
も、根っからのいいかげんな性格で、なりゆきまかせに生きている。

てな感じ。なんたってレゲエが利いてます(途中からスカです)。沈滞した時、
「スカ聞こうぜ〜」って。

和田京子のセーラー服姿に、おぢさん、ゴックン。1980年の女子高生はソックタッ
チを塗り塗り。風呂あがりに飲むポカリは250CCの細いやつ。

イクオ君が母さんにHIV感染を告げた。そして訴訟の原告となることを。そのと
きの母(井上真愉見)、良かった。我が息子をつかまえて「なんでAIDSになん
かなるのよ。」だってさ。ムチャクチャだ。でも、このセリフ、抜群。うまい。

んでですね、青木郁夫君の明るいキャラクターと、その家族のわかりやすいキャラ
クターの設定が、この芝居を面白くしたと思えるのですが、担当医師と製薬会社プ
ロパー(MR)の描き方が、結果的には「悪役」でして・・・そこんとこがいまい
ち納得行かないなあ。やっぱ、みんないい人・・・から不幸が産まれた方がリアル
でしょ。

確かにイクオ君の気持ちとしては「おじさんずるいよ」なんでしょうけど、おじさ
んだって悪気があったわけじゃないはずだし、そのおじさんもこのおじさんとおん
なじおじさん、っていう方がインパクトあると思うからさ。

そのへんにちょっと作為的なものを感じてしまった。芝居は裁判じゃないもんね。

前回の芝居の時も書いたことだけど、やっぱ悪いのは国でも医者でも製薬会社でも
なくて、この国のシステムだと思う。もちろん、裁判では「犯人」が必要だけど、
芝居で糾弾すべきものは、たぶん「時代」だと思うから。

ここまで来ると、もう一回、改訂して欲しいもんだ。

しかし、明るい東京の演劇ファンは、こーゆーの見ないんだよな。次回公演ができ
んのか、ホント心配しちゃうよお。

見終わって「この公演を見れて、ラッキーでした。」


「シ」シヌマエニ


 テーマは「死」。材料は脳死と心臓移植です。

 医師加藤が突如クモ膜下出血で倒れた。24分の血流停止。これ
は、一般的な脳死判定の基準を満たさない。だが、加藤自身が、1
8分以上の血流停止なら脳死とみなして心臓移植に踏み切るよう、
要望を残していたのだ。葛藤する医師、家族、愛人。そんな中、移
植の準備だけが着々と進み……。

 「死」とはいったい誰のものなのでしょう。本人?妻?家族?愛
する人?医師?臓器を受け取る患者?あるいは、医学の発展のため
の材料?それとも……。

 医師に罵倒された愛人が、病室に押し掛けて、加藤の呼吸装置を
外したという報告でこの芝居は終わります。この報告を、やけを起
こした愛人の「殺人行為」だと受け止めた観客は、すぐに、では心
臓移植なら殺人ではなかったのかという疑問に突き当たります。

 そして、目的論によって巧みに回避されていた、「死」そのもの
の重さを、「殺人行為」の衝撃と重ね合わせて受けとめることにな
るのです。このラストは秀逸です。

 役割分担の配し方なども上手いと思うのですが、個々の役者の体
現する葛藤の味付けが薄い点と、死んだ加藤の人間像がぼやけてい
る点とに、少々物足りなさを感じました。

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【「シ」シヌマエニ】 F.A.Network
  作・演出:川部一郎
  出演:福田潔(医者)和田京子(愛人)川部一郎(加藤)井上
     真愉見(妻)塩田昌宏(妻の兄)高橋佳織(看護婦)
 1995.2.21 こまばアゴラ 2.21 Tue Sw 3列 9割
 3.14 / 4.1-3 にも同じ劇場にて公演あり
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(下の文章の文責:まねきねこさん)


4/1(土)2:00-3:30pm くもり・こまばアゴラ劇場 F.A.Network
 「「シ」シヌマエニ」 作・演出:川部一郎         客30位?

 ねこも見ました。相変わらず、お客少なくて残念。和田さんみるだけでも、
 眼にいいのにさ(->#544)。でも、開演前ぎりぎりOKは、助かるねこ。
#388 亮さんRあり。お話は、#541ツクシさんRとも参照ください。

 脳死判定を巡る倫理とか、感情論とか前面になし。医師の脳死の話も事務的。
 ぼーせん、生きることのみを願う周囲が主。その演出もさらり。これ、ほんと
 らしくていい。好感。ねこも結局、訳解らず医師任せにするだろうから。
 コンセンサスなしの医学の問題とか、巧く浮かばせた佳作と思うねこ。(4/2,3)



(下の文章の文責:一寸小丸さん)


F.A.Network Vol.10「「シ」シヌマエニ」4月3日7時(1:20')
駒場アゴラ劇場 前\2200 当\2500 2/21,3/4,4/1-3(6ステ)
作・演出/川部一郎 03-3365-6377 客30(5割)

社会的な題材をテーマとして作品化している劇団。過去に、AIDS、戦争、
教育、宗教などを取り上げている。今回は「脳死と臓器移植」の問題。

●医師。妻と愛人を持つ。脳死の問題に強く関心を持っている。自分の脳死後、
すべての臓器を移植に供与すべく、脳死の判定基準と提供リストを友人医師
に提出した。1年後、クモ膜下出血により、脳死「状態」となる。

その時、妊娠9ヵ月であった妻とその兄が、病院へとかけつける。友人医師
より、臓器提供リストを見せられ、茫然とする。一方、愛人である若い娘は
彼からビデオを預かっていた。リストに加えるべきメッセージのビデオ。し
かし、そのビデオを見せることを拒む。彼女は、脳死を死と受けとめること
ができず、医師の身勝手で「死」と判定されるように思えるのだ。脳に血液
が供給されない状態が最低A分から最高B分(B分でほぼ確実に脳死)まで
の範囲で続くと、脳死となると見られ、今回の場合、ちょうど真ん中あたり
の時間であったと設定されている。どっちとも・・・。脳死状態と表現せざ
るを得ない。本人が設定した時間は越えているので、医師は脳死と判定して
医学の発展のためにも、本人の意志を尊重して移植したいと進言する。

妻のとまb。{垂ヨフ渠O。愛人の発覚。結論の先延ばし。

愛人娘の不満。一縷の望みへの執着。友人医師への疑念。いらだち。

友人医師の苦悩。脳死判定への苦慮。臓器を望む患者の希望。脳死宣告の困難。

芝居は愛人娘の人工呼吸器停止という単独暴挙で幕を閉じる。

シンプルで、うまいです。昔、F.A.Networkは社会問題そのものを取り上げ、厚生省
とかを追及するようなハデな芝居を作ってました。しかし、AIDS問題を再演する
うちに、人間を描く方が面白いことに気づいたみたいです。社会問題を描くのではな
く、問題ある社会の中で生きる人々を、丹念に描いています。例え私達自身が問題に
直面していなくても、可能性としてはAIDSだろうが脳死だろうが、確実に起こり
えるわけです。それを考えさせる意味で、問題を描くのではなく、そこにいる人間を
描くのは優れていると思います。一貫したテーマとして、直面するまで「あいまい」
にしている点と、「お役所とかどっかがなんとかしてくれる」とまかせている私達の
態度をつっこんでくるようになったのも、正しいと思います。

F.A.には珍しく完璧なエンディングでしたね。アゴラの上手袖にはエレベータがある
んですけど、これを病院のエレベータと設定して、うまく使ってました。タイムラグ
とかがあり難しいでしょうに、絶妙のタイミングでエレベータを動かしてました。そ
して、人工呼吸器だったか生命維持装置だかが外された報せを受けた医師が、一瞬茫
然とした後、あわててエレベータのボタンを何度も押して呼ぶ。しかしなかなかエレ
ベータはやってこない。いらつく医師。待ち切れず、階段へと走り去る医師。誰もい
なくなった舞台。やっとエレベータが到着し、乗り手のいないまま扉が開き、しばら
くして無人のエレベータがゆっくり閉まる・・・暗転。うまい。

和田京子はもおう、和田京子でした。デビューで強姦されて以来のファンですから。
22歳という設定は実年令でしょうね。演ぶに変な顔の写真は出てるけど、年令は出
てないのな。いいけど。

見終わって「次回公演は、あるのかなあ。(毎回思う)」



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にしかど(nskd@enpe.net)