トム・プロジェクト


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マシーン日記 (96.9)

見終ったときは、やや物足りない印象が残ったのですけれど、じわ
じわとボディーブローのように効いてきています。当日券でも入れ
そうな気配でしたので、とりあえず観ることをおすすめします。

下北沢はザ・スズナリ03-349-0511にて、11日(水)まで。

松尾スズキは、たくさんの登場人物とエピソードが入り乱れ、シー
ンがめまぐるしく展開するようなケイオティックな群集劇について
は天才的に巧いです。今回は役者4人っていうのが前提の芝居です
から、その手のカオスは難しいという事情があります。

それで、日常会話から4人の関係性を描いていくっていう、そうい
う舞台になってました。どこか狂ったキャラクターばかり出てくる
割に、「静かな演劇」に近いような印象を受けるのは、そのへんの
ところでしょう。

片桐、有薗、加地、加藤、それぞれの役者の狂いぶりは見事です。
それぞれタイプの違うずれ方をしていて、どの2人のシーンでも、
かならず違和感があるっていうのはすごいです。

日常という場、しかも一室の内部という閉鎖空間にありながら、4
人の狂気が噛み合わないまま加速していくっていう展開は、違和感
がなんかこう中に鬱積していく感じで、見てる間はかなりつらいと
いうかしんどいものがありました。

松尾独特の場面展開のスピード感がやや乏しく(とはいっても壁が
ぐいーんと観音開きになって部屋の内部が露出するあたりのスピー
ド感はさすがでしたが)、笑いでのガス抜きも少なかったので、余
計にそう思ったのでしょう。

これはもろネタバレですが、ラストシーンは、いろいろ解釈はある
んでしょうけど、兄弟が二人で並んで笑っている、そこが一番アレ
なんだろうな、という気がしました。弟の足の鎖は外れたけれど、
この二人はどこまでも鎖でつながれている。

弟に強姦されて兄の妻になったサチコ(加藤直美)も、兄弟にとっ
ては、絆を深めるための接着剤にすぎなかったのかもしれません。
絆を奪おうとしたサチコは闖入者のケイコ(片桐はいり)によって
排除される。ケイコが求めているのは、そのような絆とは正反対の、
セックスと主従だけの機械的な関係です。

「業の深さ」「どうしようもなさ」みたいのがあって、それが脱出
不能というかそういう暗い感じもするし、一方では「それでも愛は
ある」「これでいいのだ」「しょーがねーなあ、ははは」みたいな
赦しの部分もある。それはいつもの松尾スズキなのだけど、今回、
私にとっては、後者の側面がちょっと弱いように感じられたのでし
た。うまく笑えなかったっていうか。



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にしかど(nskd@enpe.net)