つかこうへい事務所


概要
つかこうへいの事務所。

構成員
主な作家
つかこうへい
主な演出家
つかこうへい
主な役者
平栗あつみ
山本亨
山崎銀之丞
若林ケン
主なスタッフ
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過去の公演

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熱海殺人事件パターン3 (90.6)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい事務所「熱海殺人事件パターン3」6月15日7時 最後列席
作・演出 つかこうへい 部長/岡森諦 刑事/春田純一 2800円
新宿・紀伊国屋ホール(03−354−0141)2時間 7月4日まで

「つか」が何もんだか知らない人には、不可解かもしれませんが、言います。

そりゃあ「つか」で「熱海」で「紀伊国屋」で「木村伝兵衛」の金看板しょって
役者やるにゃあ、尋常であるわけにゃ行かない。ましてや客の中には「あれだっ
たら、俺の方がイイじゃねーか」なんて思ってるやつがいる。「風間は、平田は、
加藤は、岡本は・・・」って比較してる。あがるよ。緊張するよ。実際、岡森さ
ん、最初はヒドカッタ。ただ怒鳴ってるだけ。3人ともちっとも遊んでなかった。
芝居を楽しんでなくって、必死で演じてた。客を引っ張ってなかった。でも、ま、
中盤から落ち着いて、良くなった。がんばってた。このパターンは初日ですから、
明日からは大丈夫だな。・・・でも、昔と同じところにゃ批判的で、新しい部分
は楽しめたっつーのは、やっぱ比べてるだけかなあ。初見の人、レビューして下
さいね。だって私ら、冷静な判断、無理ですもの・・・。

見終わって「こりゃあ、残りのツーパターンも、見なきゃなあ・・・。」

「つか」について3日3晩語り続けられる奴って、多いんだよ。ね。



熱海殺人事件パターン1 (90.6)


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい事務所「熱海殺人事件パターン1」6月18日7時
新宿・紀伊国屋ホール(03−354−0141)当日桟敷2500円
部長/塩見三省 刑事/岡森諦 7月4日まで 2時間10分

列、当日、開演2時間半前で10番。まだ、余裕(1時間前で十分、可)。

岡森がいいぞー。塩見さんは、風間さんと言うよりは三浦洋一派だ。岡森
伝兵衛よりはずっとうまい。安心して見てられる。流暢だし、余裕だ。が、
あたしゃ、岡森さんの方が好きだ。で、なんでかと言うと、岡森さんの方
がまだへただけど・・・つかっぽいんだ。お客相手に、コノッコノッてつ
っこんでくるんだ。あと、前回は酒井さん、良かったけど、今回は・・・。

見終わって「塩見さん、うまいから、岡森さん、楽だ。岡森さん相手の春
田さんは、確かに損だ・・・。わーってるよ、塩見・春田、見るよ。」

小屋で見かけた芸能人・・

15日(金)松金よね子、渡辺徹
18日(月)小田島雄志、平田満、石丸謙二郎、阿部寛



熱海殺人事件パターン2 (90.6)


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい事務所「熱海殺人事件パターン2」6月23日2時 当日2500円
部長/塩見三省 刑事/春田純一 新宿・紀伊国屋ホール03−354−0141
2時間10分 4日まで

結局、趣味の問題ですもんね。あたしゃ岡森さんに惚れましたから。でも
春田さんは情けない芝居は秀逸でした。情緒的なセリフ(怒ったり泣いた
り)がイマイチですが、それってスグ身につくから。酒井さんは一番安定
してる。平栗さんは昔の「岡本麗」さんとは別の婦警像を作りました。
「水野朋子物語」からの一節などは平栗さんならでは。

さて、3つのキャスティングパターンを見尽くしての、私の趣味で選ぶ、
ベストキャスティング。

木村伝兵衛部長刑事/岡森諦
熊田留吉刑事 /岡森諦
水野朋子婦警 /平栗あつみ
大山金太郎容疑者 /塩見三省

こりゃあ趣味以外のなにもんでもないなあ。異論反論オブジェクションだね。


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


私は、大山が照明とか指示した記憶、なかった。たった1回(風間平田加藤岡本の)
しか見てないから、記憶不安だったんで、定本熱海で調べた(探すんで部屋中ホコリ
だらけだぞ)。やっぱ、そーゆーセリフないよ。ただ確かに今回のとは違って、昔の
は熊田大山ハナ子(水野のこと)の3人で協力して事件を作りあげてくって感じ。そ
の時のことを3人で再現してくって感じなの(最後は2人で)。今回のはリアルだも
んねえ。でさ、その差はどっからくるのでしょ。多分、役者なんだよね。加藤さんは
押しが強いから3人のノリで殺せたけど(そーいえば昔、「大山は本当に殺したか」
ってのが問題になったよね)、酒井さんはひいちゃうから、リアルな設定が必要なの
(でもそのおかげで疑問の余地なく殺してる)。今回売春なんて説明的な要素が入っ
たけど、こーゆー時代に合わせたというよりは、役者がそーでもしないと殺せないっ
てことだったと思う。事件が成立しなかったんだよ。つかさんもつらいとこだ。つか
さんは、この役者のレベルをよーく知ってるはず。それは幕末純情伝のバリライトと
同じ。つかさんの演劇論にバリライト、ないもの。ゆってるもの。「芝居でいくら明
かり仕込んでも、夜のヒットスタジオにはかなわないんだから。」って(ちなみに、
ヒットスタジオINT’Lは照明機材見本市だから、明かり屋さんはチェックしてる
よね)。じゃ、なぜバリライト使ったのかってったら、それなしじゃ芝居見せらんな
い、芝居成立させらんない役者だったって・・・。役者のリアリティで客だましたい
つかさんが必死で役者探してるよ。来年の「引退屋リリィ」のオーディションを何度
もやってるもの。それで見つけた役者を1年間ケーコするってくらいだから・・・。



飛龍伝 '90−殺戮の秋 (90.11)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい作・演出「飛龍伝 '90−殺戮の秋」11月20日6時半(2:30')
銀座セゾン劇場 5000円(学生2000円席あり) 11/6〜25
作・演出/つかこうへい 出演/富田靖子、筧利夫、他

つかを知らない人もたくさんいるから、今回はムキになって入るのよそうと思って
たけど、条件反射なんですねえ、チケット余ってそうな人を見ると、即座に反応し
てしまうの(でも、一人目はガマンしたの.たらその人、50人からの人に向かっ
て、ジャンケンして下さいだって.そーゆー時、遠慮してちゃいけないんですが結
局、私を含む7人でジャンケンして、私はちゃんと負けましたけど、次の瞬間、別
のチケットを持った人にアタックして、しっかり入ってしまいました)。おそらく
40人以上がそのまま帰ったろうに・・・。

で、芝居です。
なぜ。そこまでサービスしますかね。芝居以外の余計なもんが多すぎるのは、見る
側がこらえしょうがないからでしょか。余計なセリフが多すぎるのは、出演者に見
せ場を作ってあげたいという親心でしょか。それにしてもあのテーマソングは聞か
なかったことにしましょ。筧だし、富田だからと言っても、10年前につかさんが
完成させた方法論を繰り返してもしょうがないよ。それは他のいろんな劇団がやっ
てるもの。自分が作ったもんを壊して、と言うのは酷でしょか。でも、昔、つかさ
んの芝居に感動したのは「芝居って、こんなんありかよ」ですから、今、見て感動
してる人には、そういうのは起きないでしょうね。泣かされましたよ。でも・・・。

見終わって「樺美智子さんの死について知らない方が多いんだから、90年の飛龍
伝に違いありません。でも、昔この日本がだめだと思った人は、今の
日本をどう思っているんでしょ。ビートたけしをして理想的な共産主
義と言わしめるこの国だけど、これでいいとは思ってないんでしょね」



リング・リング・リング (91.11)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい「リング・リング・リング」11月20日7時(2:20')
渋谷/パルコ劇場 3800円(当日アリ) 11/10〜12/12(33ステ)
作・演出/つかこうへい 03-3477-5858 客460(満員)

直木賞作家のつかが、「長与千種スペシャル」として贈る「女子プロレス純情
物語」。去年と今年の「熱海殺人事件」で、大山金太郎の登場シーンで大山に
替わって「マイウェイ」を熱唱していたちょい役の長与が、JAC他の男優陣
を従えて(春田さんもだ)、今、センタースポットに・・・。

いかにも「つか」です。ただただハデです。やっぱシンを取る役者がシロート
ですから、すべてがおおげさになるのはやむをえません。ミーハーな曲をガン
ガンかけ、陰マイクで煽るいつものパターンの連続です。素舞台に、たった一
人で立つ役者が、その存在感だけで盛り上げられない時、あらゆる演出を使わ
なければなりません。とにかくお客さんには泣いてもらわねばならんのですか
ら。役者のイモ度に比例して、演出はハデになります。そーゆーもんです。

女子プロがどんなもんかを知っている人の方が感情移入できます。「親の死に
めに会えない」世界はみんな同じです。他にもいろいろあるでしょう。そこで
入れ込まないとシラケます。私はいちいち、泣きましたね。

男優がいいです。いよいよ「つか組」も育ってきました。特に「弁護士」役の
人が登場した時、小丸は「おっ!」と思いました。出てきた瞬間に「おっ!」
と思いました。「こいつ、できるなっ!」という雰囲気を肩に背負ってました。
セリフを言った瞬間「おおっ!」と思いました。これからご覧になる方も「お
おっ!」て思ってくださいませ。(なんのこっちゃ)

見終わって「これは、長い歴史の通過点の芝居でしょう。長与はモノマネだ。」


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


『「つか」の「やらせ」について』

「つか」は「やります」。何でもやります。面白いと思ったこと、お客が喜ぶと
思ったことは何でもやります。

例えば「娘に語る祖国」が評判になっていた頃、新劇に「私つかに、娘はいない」
とか書いてました。あたしゃ本屋で立ち読みしてて爆笑してしまいました。

例えば去年の復活「熱海」です。毎回最後に「幻のCM」ビデオが当たる抽選会
があったんですが、そのためにお客全員に配る抽選券が「手書き」だったんです。
んで「5本当たる」といいながら実は1本だけだったようで(それだって小丸は
本当に当たりがあるとは思わなかった)、実際に当たるか否かじゃなくて、その
抽選(幻のCMはつかファンにとっては垂涎の的だった、私は見たが)をやるっ
てことでどんなに盛り上がったことか。そのためにワザワザ急ごしらえで抽選券
を作るんだからね。その「ワザワザ」が好きよ。

でも、そおゆう「芝居以外のこと」をやることの理由は一つです。今年の熱海で
は何もしませんでした。「リングリングリング」だってあんなキーボード揃える
理由は、一つだけです。「そうしないとなんないから」です。

(この話しは有名だで、知ってる人も多いでしょうが、書かせて)
初めて蒲田行進曲を舞台にするとき、主人公は長谷川康夫の予定でした。ほら、
主役の名前がヤスでしょ。んで本番を間近にしていまいち盛り上がりません。最
後には本当に階段落ちをやらそうかと考えたそうです。巨大な階段を作って・・・。
確かにそれで役者殺せば、お客も納得してくれるでしょう。稽古の緊張が高まっ
ていきました。そんなある日、奥さんである角替さんの弁当を持った柄本明がふ
らりと稽古場を訪ねました。どうせだから、ちょっとヤスをやってみろ、ってん
で柄本さんが長谷川さんの代わりにやってみました。主役の交代が決まりました。
何も言ってないのに、その柄本を見ていた装置の石井さんがボソッと言ったそう
です。「百万、浮いたな」と。そうです。巨大階段を作らなくて済むことが、ス
タッフにも、その瞬間わかったそうです。もし、角替さんが弁当忘れなかったら、
今のCカンパニーはなかったでしょう。(なんて、一部脚色あるかな)

たぶん盛り上げるためなら役者も殺すでしょう(私はそう信じている)。そうい
う演出をせんと盛り上がらない、というのを演出家は感じるものです。できの悪
さを感じるものです。だから作っていく上でどんどんエスカレートするんです。
あれですよ。「飛龍」ということばの出てこない「飛龍伝'90」だって破綻して
たと思います。今年の「熱海」だってメチャクチャです。でもそれを支えるのが
役者です。破綻に気づかせないのが役者です。それが富田であり筧であり成志だ
ったんです。(ただし飛龍伝みたいに二人芝居にしちまえるのは楽だが、過去の
遺産をしょっている熱海は、そうもいかない)。今年の熱海って矛盾だらけだっ
たんだよね。クライマックスに「花束で大山を打つ」ってありえないもの。客席
に降りてお客の唇を奪うのも矛盾してるもの。(風間の時代は自然だったのだ)

「リングリングリング」はやりまくらざるを得ませんでした。「ハデな照明とか
使うのってバカだね。どんなにやったって、ヒットスタジオにかなうわけないも
の」と言っているつかさんが、幕末純情伝同様、ハデ演出に徹したのは、つかさ
んの唯一の演劇理論である「役者のいきづくり」が見せられないと感じたからで
しょう。でも主人公が弱いおかげで拾いもんがありました。今まで、強力な主人
公の元でやってきた新つか組のワキ役たちが頑張りましたもの。初めて主張しま
したもの。大事なのよ、客席に一歩踏み込んでくることが。ザズゥの大石が格段
の進歩を見せているけど、彼に欠けるのはそこ。第三舞台の勝村もだ(そういう
とこは大高さんや小須田さんの方が上だ)。今回の木下さん、楽しみだねぇ。ま
だ技術は稚拙だけど、いきなり客にガン飛ばしてるもの。あたしゃ登場した瞬間、
ハッとしたもんね(客席最後列でだ)。つかさん、いいもん拾ったなあ。

(ほーら、小丸さんの「つか話し」は、止らなくなるんよ)



熱海殺人事件 (91.4)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい事務所「熱海殺人事件」4月7日2時(2:25')
新宿/紀伊国屋ホール(問03-3354-0141) 1000円 4/2〜25(26ステ)
作・演出/つかこうへい 出演/池田成志、春田純一、平栗、その他 客480

開演10分前、小丸は客席に違和感を覚えた。いつもと何かが違う・・・。当日
券でH列14番という最良の席を得た私の前に(E,F,G列)、中高生の一群
が。そう言えば、あきらかに観客の平均年令が低い。開演、5分前、G列15番
にショルダーバッグを下げたおぢさん。子供達は「先生」と呼んでいる。

そうなんだよなあ。今回1000円だから、子供の団体観劇なんてできたんだよ
なあ。いいことだよなあ。つかさん、いいことやったなあ。すごいなあ。見たい
子が見れるんだもの。先生、あんたエライよ。15才でつか体験するのって、い
いよなあ。うらやましいよ。染み込むもんなあ。そんだけで、感激して目頭熱く
している私さ。そして、この時ほど「いい芝居やってくれよぉ」って心の底から
切実に願ったことはありません。頼むよ。お願いだよぉ・・・。

今、思いだすと、オープニングのチャイコフスキーが流れ出した時の小丸の姿。
イスから身を乗り出し、背筋を伸ばし、手を組んで涙を浮かべ歯をくいしばり、
必死で緞帳を凝視してる。まわりのお客は「何だ」と思うだろうが、幸いにして
両隣とも空席だったのさ。さあ、始まった・・・。

ばっちグー。成志ありがとう。春田さんも去年と比べ、すごくいい。余裕でお客
をツンツンできるようになった。まだ細やかな情感を出すのは弱いけど、大進歩。
成志と春田さんの見せ場ばっか増えて、その他、カットカット。そーだろ〜よ。

去年、「大山は殺せない」と思った私の疑問も、きっちり解決させた。解決させ
といて、事件そのものをワキにやっちまうなんてぇ馬鹿なこと、成志じゃなきゃ
できねぇよ。成志の熱海だ。サブタイトルは伊達じゃない。てーしたもんだ。

終演後、全員して熱心にアンケート記入してる一群を残し、ロビーで引率の先生
つかまえて聞いた。高校の1、2年の有志20数名だってさ。

見終わって「明日始業式だってさ。てめぇらっ、人生誤んじゃねーぞ。」


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


「楽日過ぎまで待てない>熱海」

ご存じの通り芝居は個人のもんです。「こーゆー風に観れば面白い」とか言われ
ても、あなたにとって面白くなければ手遅れです。残念です。んだから「私はこ
ーして面白かった」とか言っても意味ない。特に私みたいに「去年と比べて」な
んて場合、去年観てない人には説得力ない。んでも言いたいの。言わせて。そん
なことわかってたけど面白くなかったのだ、と言われそうだけど、これが「私が
熱海を楽しめた理由」だよ。(これから熱海を見る人は読まない方が・・・)

去年と比べての違い その理由
1.テーマが変わった>愛 池田成志のキャラクター

2.事件が変わった>共犯・合意 酒井金太郎には殺せない

3.芝居が増えた>伝兵衛・留吉 池田の魅力と春田の成長

4.芝居が減った>ヤクルトおばさん
アメリカ娘 その必要がなくなった
大山金太郎

そして唯一不幸であったのは、去年の遺産を引きずらなければならなかったこと。
ヤクルトおばさんはカットできた。アメリカ娘だっていらない。それどころか、
今年のテーマからすれば、大山金太郎の存在すらいらない。しかし、諸般の事情
でカットできない。去年、岡森伝兵衛の場合2時間ちょうど。塩見伝兵衛の2つ
のヴァージョンは2時間10分(昨年の小丸のレビューから)。抽選会を含めて
だよ。なのに、ヤクルトおばさんカットして、アメ娘と金太郎のセリフを減らし
たのに、今年は2時間25分(小丸の観た日)。だから散漫になったんだよ。も
っとカットしたかったに違いない。できることならばさ。(あえて言うなら、前
半の30分がつまらないのは、伝兵衛が去年と同じだから)

カットは急遽だったに違いない。留吉が騙され狂うのは、去年はヤクルトとベル
リッツの2回あったためで納得できた。今回、唐突だった。1度しか騙されてい
ないから。なのに「人間2度も死にそうな経験すると〜」のセリフが残ってた。
(もっとも、たくさんたくさん破綻してるんだけどさ)

昨年、私は酒井金太郎には殺せないと言った。酒井さんのキャラクターではやさ
しすぎて、たとえ惚れた女が売春婦やってようと、殺せませんよ。今年、その弱
いキャラクターを補うため、共犯者を作った。共謀による計画殺人であったと。
一人じゃできないから、手助けがあったのだと。さらに、アイ子自身が殺される
ことを予感していて金太郎についてきた、と言わせている。これなら殺せるな。

そうまでして殺人事件を練り上げておいて、事件自体をワキに追いやったのは、
池田成志の人柄です。あの明るさがすべてです。結論を言えば、朋子は伝兵衛を
置いてよそへ嫁げませんよ。そんなはずない、と私は信じたい(私の甘さです)。

つかこうへいにもし演劇論が存在するとするなら、それはたった一つ「役者の活
け造り」です。照明とか音楽の使い方なんて、ショーから持ってきたもんで誰で
もできます。「つかこうへいみたいな演出」と言えるものがあるなら、それは役
者を生かすために、ホンをすっかり変えてしまうことです。だから私は、つかさ
んによって、その役者でどうホンが変わったかを観るのです。去年、塩見さんで
何が変わったでしょう。ヤクルトおばさん、アメリカ娘、長与千種、つまり塩見
さん以外の部分ばかりでした。その意味する所については・・・言わない。なぜ
抽選会やったのか。だって幕、降ろせないもの。客が帰れないもの。

飛竜伝がラブストーリーになったのは富田靖子のせいです。あの子の「んだって
私はここにいるもの」という叫びが、闘争がなんぼのもんじゃい、石ころがなん
ぼのもんじゃい、になったんです。

成志です。うどんを拾うんです。伝兵衛と朋子は二人して、留吉がちらかしたう
どんをかたずけるんです。かつて、そんな伝兵衛がいたでしょうか。三浦さんも
風間さんも塩見さんも、絶対に拾いません(記憶にないだけだったりして)。私
は三浦さんのは観てないけど、そうに違いない。だけど成志は拾うんです。そん
な男を置いて、女は去っていけるのでしょうか。普通、女はいとおしくなるもん
でしょ(完全に私個人の女性観だかな)。三浦も風間も塩見も岡森も、朋子は過
去にできますけど、成志を残しては行けません。(そこのあなたなら、どう?)

だから、テーマは愛、なんです。成志が美学を盾につっぱらかるから、朋子がど
う出るかが注目になり、その話しが膨らむんです。そしてエンディングです。か
つての名セリフ「ううん、いい火加減だ」に匹敵するセリフは何でしょう(去年
はエンディングにセリフすらなかった)。私の勝手な思い込みによると、朋子が
戻ってくることを暗示させるものでなければなりません。今回、最後の一つ前の
セリフはいい。彼の美学ですから。しかし、最後のは物足りません。花びらが散
ってくる、とかいうの。私は楽日までに絶対変わると信じてます。あれじゃ幕は
降ろせませんぜ。かつては「ううん、いい火加減だ」と言うのと同時に拍手が舞
い起きたけど、今年のじゃ拍手を引っ張れませんよ。まだ花びらでしたか?

てなわけで、もし来年も成志がやるんなら、思いっきり変わるだろなあ。まだ酒
井さんが金太郎やるなら、ホントに犯人、なくなるぞ。犯人なしでもできるもの。
ま、どーせなら成志、筧、文月遊(おいおい(^^;))で新作やって欲しいよ。

おしまい(長くてどーも、ごめんなさい.間違いは指摘して!)


(下の文章の文責:一寸小丸さん)

「熱海殺人事件/楽日報告」

あっちこっちから聞こえてくる評判があまり芳しくない成志版熱海殺人事件で
あるが、旧作との融合で芝居が破綻しているだけだと思い込む小丸は、エンデ
ィングの変化を期待しつつ、楽日を観劇した。4月2日から始まった公演の千
秋楽が当日売のみということで、世の風評にもかかわらず2日前からの徹夜組
が出ていた模様。前日の夜には長蛇の列となり、冷たい雨の中、紀伊国屋の周
囲は夜半過ぎには数百人の列に膨れ上がっていた。何も知らない小丸は、25
日早朝4時半(前日飲んで寝ちゃったの)、降りしきる冷たい雨の中、チャリ
ンコを駆って5時過ぎに紀伊国屋の前に到着した。既に黒山の人集り・・・が、
ない。誰もいない。なんと、雨に濡れるのを心配したホール側が、午前1時か
ら整理券を配布、その後も1時間おきに配り、午前5時の時点では急遽決まっ
た昼公演分はキャンセル待ち(500番台)、小丸のもらった夜公演分は415番で
あった(桟敷席=階段に二人座り、を含め500席程度のキャパ)。おかげで
朝6時前には家に戻り、夕方までノンビリ過ごせた・・・紀伊国屋えらい(だ
って、整理券配る係の人って徹夜だもん・・・普通そこまでしないよぉ)。

さて、芝居です。楽日ということで、春田さんは「ヘンシーン」をやるし、成
志は「声試し」のとこで途中に「最後まで頑張ります」とか入れるし、「うど
ん」にはマヨネーズと醤油をかけて食うし、「腐った人」はいつもより長くや
るしと、いっぱい遊んでいた。しかし、いつもと違うことをちょっとやっただ
けで敏感に反応する大勢の客っていったい・・・。

さて、緞帳が降り、客出し音楽が流れ、観客の拍手が手拍子に変わり・・・

突然、音楽がベースの効いた歌謡曲に変わる。幕が開くと中央に立っている演
歌歌手(角刈り頭でハデな和服姿)。タキシードを着た司会者登場。

司会「みなさま、おひさしぶりでございます。パルコ劇場の公演を1回休んで
駆け付けてまいりました、わたくし、岡森諦でございます。お元気です
か。さあ、それでは歌っていただきましょう。北島三郎の****。」

シロートにしてはうまい歌手、カラオケのノリでワンコーラス歌い切る

岡森「ご紹介致しましょう。本公演を一律千円と提供なさいましたフォンコー
ポレーション社長****です。シャイな恥ずかしがりやの社長です。
歌好きに社員一同泣いております。ありがとうございました。」

社長、去る

岡森「さあ、それではそろそろ始めましょうか。楽日恒例、ジャンケン大会。」
岡森「それでは登場していただきましょう。ジャンケン男、池田成志。」

成志、社長に負けないハデな和服と金ピカの扇子を持って登場

岡森「本日の景品は、私も出演した幕末純情伝のビデオ、私が出演しなかった
飛龍伝90のビデオ、および例の幻のビデオ、さらに5月に行なわれま
す『成志と行こうハイキング』の申込用紙、また、私が築地の女を騙し
て手に入れました荒巻ジャケ20本(美術バトンに吊ってある)でござ
います。」

以下、ジャンケン大会(成志と客全員の勝負で、成志に勝った者が残る)
を大騒ぎの中で終了し、お開きとなる

なんつうか、善人会議の公演では、小丸をして岡森のおの字も書かせない程の
地味な芝居なのに、どうしてそんなに喜々としてノッてんだか。その浮ついた
役者根性が、あたしゃ大好きだよ岡森さん。

終わった。最後のセリフは、「春になれば、また花びらが舞い込んで来るでし
ょう。」のままだった。さすがに成志も、それじゃ楽日の幕は降ろせないと思
ったのか、その直後に「キューッ」ってキッカケを出していた。おかげで幕よ
りも先に拍手を入れることができた。みんなが心配していたノドも、私が見た
7日とちっとも変わることなく、ガンガン出ていた(私は心配していなかった
けどね)。あんなもんよ。11月の「哀愁の夜」改め「ドーピング」のキャス
ティングが待ち遠しい。当分、熱海で遊べるけどさ・・・。遊ぶぞい。


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


「またかとお思いでしょが、熱海」

熱海殺人事件は、東京は終わったけど地方公演はこれからだもんね。6月3日
まであるもんね・・・。(でも、それが終わるのを待てないから)

今回の熱海の「破綻」についてひとつだけ(面白い話しじゃないかも、ですが)。
ちょっと話題になってました「客席に降りてブチュ」ですが、もちろんあんな
こといけないことです。だから、去年も今年もちゃんと役者を仕込んでありま
す。演出家は、その役者にしなさい、と演出したはずです。実際、去年はそう
でした。その人だけでした。だから役者が勝手にやってるだけです。それはも
う役者の思い込みだけです(確か風間さんも好き勝手やってたハズ)。で、そ
ういう成志だから私は買いますね。お客さんは災難でしょが。

ちなみに同じつかさんの「いつも心に太陽を」では、芝居の冒頭、ビキニパン
ツ一枚の萩原流行さんと石丸謙二郎さんが、奇声を発しながら客席最前列の客
に次々とキスをするという演出がなされました。そりゃあもう大騒ぎで、どう
したら最前列に座れるかが友達の間で問題となったものです・・・。

ところで、熱海において「なぜ木村伝兵衛は客席に降りて客の唇を奪う?」の
でしょう。きっとわからないハズです。だって今回の芝居では不自然ですもの。
破綻してるんですもの。トートツに感じるはずですが(そーでもない?)。ど
でしょ? トートツじゃなかったですか? あたしは・・・。



熱海殺人事件 (92.4)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい事務所「熱海殺人事件」4月3日7時(1:58')
新宿/紀伊國屋ホール 1000円 4/2〜22(23ステ)
出/池田、春田、平栗、山崎 03-3295-9955(JCB) 客480(当日券60枚)

言わずと知れたつかの紀伊國屋の熱海も、来年からはない模様。見納めキャストは
昨年同様の成志伝兵衛と春田・平栗に加え、キャスト争奪戦(だと思う)に勝った
山崎銀之丞が大山金太郎だ(おそらく今後、鈴木鉄馬、安部銀次らの登場もありう
るだろう)。酒井金太郎で無理があった点や、破綻してた点を修正し、余計な芝居
もカットしてキッチリまとまった(でも、結局いらん設定が残ってしまった)。

今日の成志はヒドイ。テンション低い。山崎が出るまでが特にひでぇ。帰りたくな
ったぞ。ちっとも遊んでないんだもん。もちっと頑張って欲しいなあ。

山崎がいい。ほとんど私が鈴木鉄馬に見ていたのと同じイメージ。今回、ロンゲス
トスプリングがどっか行って、「対決」もんになったのはこいつのせい。戦いだ。

いろいろ変わった。最も変わったのは、成志の伝兵衛像。甘さが消えた。これなら
水野も確実に嫁げる。でも私は去年の「ほっといて嫁げない」伝兵衛が好きだ。ロ
ンゲストスプリングが好きだ。ちょっと残念だ。

悲惨な事件となった。ほとんど殺せない状況にしといて、突然一発で状況を変化さ
せたのが見事。当然、成志のお客羽交い絞めディープキスがなくなった(他の日は
どうだろう)。みんな山崎のせいだ。すごい。

見終わって「芝居としては今年の方が完成してるが、成志は去年の方がいい。」



飛龍伝'92 (92.6)

(下の文章の文責:一寸小丸さん)


銀座セゾン劇場「飛龍伝'92」6月24日6時半(2:45')
銀座セゾン劇場 5000円 6/6〜28(25ステ)
作・演出/つかこうへい 03-3535-0555 客774(定員)

今回も「飛龍伝」の「ヒの字」も出ない。飛龍なき飛龍伝。そして、90年版と
全く変わり、「愛の物語」から「男達の物語」へ。

んだってしょうがないんです。そりゃあ「富田と筧」は泣けました。今年は筧の一人
芝居です。本来マキセが言うべきセリフも、筧が言ってしまってます。マキセは人形
にすぎません。演出家に言われた通りに立ち位置を移動しているだけです。群衆の中
に入ると見失います。どセンターで振り向き様に見栄を切っても、群衆に埋没してし
まい見えません。だもんだから、その瞬間、レーザーなんか使って、目出立たせてま
す。情けないやね。あのマキセでは、愛の物語は生まれません。とにかく子供なんで
すから。ヒザが甘いんだ。オンナのヒザじゃない。オンナはそうゆう脚の開き方をし
ない。お〜い、誰かマキセにSEX教えてやれよお。肉体の関係なしに、ヒサンさも
ナミダも生まれませんて。やっぱ富田のアミューズとでは、事務所の意気込みが違う
んだかなあ。マキセも、「あこがれのつかさんと芝居をやりたかった」ってんなら、
オンナにしてもらわんでは、意味がないぞい。ったく、無駄だぜ。

木下浩之、いいねぇ。「リング〜」でも目立ってたけど、いい芝居してらあ。「ふん
どし刑事」で主役をはっただけのことはある。山本亨、伸びたねぇ。「心をこめて」
ん時より、ずっとテンション高かった。この、木下・山本のセリフが増えて、芝居が
変わったね。でも、泣かせるセリフを言わせたくなる役者だもんね。北島義明、すげ
かった。「心をこめて」では、ぜんぜんだめだったし、「ふんどし刑事」ではイモだ
ったけど、ホンキしてたぜ。きっと若いんだろに、貫禄あったもんなあ。この三人に
樋渡さんを加えて、ガンガンやりあってんだもの。男芝居になるやねぇ。

筧さんが登場した時、小丸は思わず、「カケイーッ!」と声を掛けてやりたくなった。
「待ってましたぁっ」てね。それぐらい期待通りの登場でした。いえ、別に何かやっ
たわけじゃありません。んだけど、はり付いている雰囲気が圧倒的でしたね。待ちく
たびれてましたし。いやあ、良かった良かった。

2年経ったんですね。とにかく役者は成長します。2年前の飛龍伝は、筧・富田の二
人芝居でした。今年は、マキセ以外のメインの役者達が、ほんとうによく頑張ってま
した。きっちり摩擦熱を発する会話劇になってましたもんねぇ。

まあ、マキセもたいしたもんです。この飛龍伝ってぇ作品だから、現さなければなら
ないことが多すぎるから、未熟さが目立つんで、あのでかい空間をしょって立つのは
たいへんなことです。あの歳で、たいしたもんですよ。ま、「泣きながら愛し合う」
なんてえことを理解せい、っつっても、無理でしょうよねぇ(でも、その気があれば、
1カ月でオンナになれる稽古がやれたはずなのにねぇ・・・・惜しいよなあ)。

それでもこの芝居を富田が見たら、泣けただろうなあ。「あたしの神林が・・・・」って
さ。罪作りだぜぇ。

あとさ、「M88星雲」はずるいよなあ。小丸は一瞬、息が詰まったぜ。「蒲田」で
一番好きなセリフなのにぃ。つかさんもやけくそだったんだろなあ。

見終わって「しかし役者が成長すると、話しがわかりやすくっていかん。やっぱワシ、
飛龍が飛ぶ飛龍伝を見たい気がするぅ。」


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


「つかっつうのについて」

ふっふっふぅ。私につかを振ってはいけない。毎度言ってますけど、つかについて
なら三日三晩語り尽くせるってぇやつがたくさんいるもんです。ねぇ若旦那さん。
そうゆうもんですよねぇ。話し始めたら止らんぞ。いいのか?・・・ もう遅い・・・。

「東京一極集中の根本的な原因は、通信の発達にもかかわらず、我々日本人が、
FACE TO FACE のコミュニケーションこそを重視するからである。」

つかが復帰してもう3年になりましょうか。それで「つか芝居」が復活したかと言
えばそれは「NO」です。復帰後の「つか演出」の芝居を見て、「つか芝居」を語
るのって、ちと苦しいんですよ。と言うのはですね、「つか芝居」って「役者の活
き造り」ですから、ちゃんと「つか」を仕込んだ役者でやらなければならないので
すが、復帰後の公演はすべて「プロデュース公演」ですもの。「セゾン劇」「パル
コ芝居」です。「つかこうへい事務所」公演は「熱海」だけでしょ。それすら、毎
年役者を集める「プロデュース」です。平田満も三浦洋一も風間杜夫も10年つき
あってます。そんな1カ月や2カ月の役者と一緒にして論じてはいけません。
(こうゆう排他的論調を、いましばらく我慢してください)

ほら、「つか芝居」ったら、ハデな照明と、やたらたくさんの人間と、アクション
と、歌って踊ってと、絶叫と、汗と、フルボリュームと、とか思っている人って多
いと思います。また、メッセージ性の強いセリフや泣きのセリフが嘘臭く感じてる
人も多いと思います。でもね、それ違うんですよ。それは「つか芝居」じゃなくて、
「つか芝居」ができない役者のせいなんですよ。過剰な演出は「役者の活き造り」
と反するものです。でも、そうでもしないと役者が舞台を維持できないんだから
しょうがありません。いくら下手な役者だからと言って、その不様な姿を晒して、
「役者が下手だから」とうそぶくわけにはいきません。見に来てくれたお客さんの
ためにも、その役者をかっこよく見せてやらなければなりません。お客を楽しませ
なければなりません。ちょうど、岩松了が下手な若手の役者を使い、己の普段の芝
居を捨てて、わかりやすい過剰な演出をしたのと同じです(アイスクリームマン)。
まったく同じです。それでもつかは「思い」の込めたセリフを言わせたがるので
(つかを知ってる役者は、思い込みセリフを言いたがるもの)、その分、問題が大
きい。つまり、下手な役者の思い込みセリフは、説得力がありませんから、嘘に聞
こえてしまいますもの。「リアリティ」がないんですから。

ってえと、やっぱ富田靖子はえらかった。ここ3年程で、ある程度つかをやれてい
た役者と言えば、筧、岡森、池田ぐらいでしょうか(山崎銀之丞もね)。彼らはた
ぶん、昔のつかを知ってます。でも、富田は知らんでしょう。なのに、よくやりま
したよね。はっきり言って、90年の「飛龍伝」は、筧・富田の二人芝居でした。
それも下手な二人芝居でした。でも、富田にはリアリティがありましたから、二人
の関係に泣けたんです。たいしたもんでした。

でも、下手であることにかわりません。二人以外の、その他大勢は論外です。だか
ら、過剰な演出でわけわかりません。そして2年です。今年の「飛龍伝」は役者芝
居でしたねえ。木下も山本も北島も樋渡も、つか以外のとこでつか芝居してました
から、成長しました。あれでマキセがまともだったら、全く別の芝居が作れたはず
です。もちろん小屋の問題も大きいが。

小屋の問題です。あのさぁ、つかがさぁ、銀座の真ん中で、つか芝居なんかやれる
はずないじゃないですか。5000円もとってさ、高そうなファッションのお嬢様
相手ですからね、ハマショー使うしかないですよ。セゾン劇場ったら、出向の社員
使って人件費を削っているのに、年間10億円もセゾングループの支援を受けない
と維持できないんですよ(日経新聞より)。いったい何に使ってるんでしょ。無駄
に豪華なんです。そんな小屋で、どんな芝居を打てというのでしょう。ハデになり
ますよねぇ。(渋谷パルコもしかりだ)

三谷が言うように、プロデュース公演と劇団の公演は別もんです。プロデュースは
お祭りです。そうとでも考えないと1〜2カ月の稽古で芝居なんか打てません。つ
かにとっての劇団の公演は紀伊国屋の熱海でした。つかは今も、自分のセリフを体
現してくれる役者を求めています。熱海はそういう場でした。でも、まだ会ってい
ません。特に女優です。「美空ひばり物語」は女優がいないので上演できません。
何度オーディションしても、出会えません。しかたがないので、来年からは育てる
というのでしょう。育って欲しいもんです。その時の新作が「つか芝居」です。

最後に時代について。確かにつかの熱いセリフは、今の時代とずれているように感
じるかもしれません。今どきは、あんなコトバは吐きませんから。青筋立てて喋り
ませんから。みんな、一歩引いてしまいますもんね。そんな感じ、よくわかります。
でも、ほんとうに時代はそうなんでしょうか。私は違うと思います。熱いセリフの
ウソが見抜かれているだけで、熱いセリフそのものが否定されているわけじゃない
と思いますよ。熱意をもって話す、ってだけのウソが見え透いているだけで、本当
に熱意があれば伝わりますもの。たとえ、テキトーにごまかして過ごしている平凡
な日常でも、思わずテンションが上がる瞬間ってあるでしょう。中産階級の劇的瞬
間(休息)ってやつが。「愛の表現」ってやつなんか特にです。あっ、それが強姦
か合意かなんかで悩まないでください。子供だなあ。「合意の上の強姦」ってのも
あるのがオトナの世界よ。「愛の表現で暴力に走る」やつは大勢います。うまく表
現できないんです。だから、熱い表現は尊重されるんです。熱いセリフなき時代だ
からと言って、人間が冷えたわけじゃありませんものね。

しかし、下手なつか芝居は多い。下手な第三舞台も多い。それは過剰な演技・演出
となって、ただうっとおしいだけです。それゆえに、青年団が試みているような、
過剰さを排除するのも面白い「技術論」ではあります。しかし、ああゆう芝居は、
テンションの低さが隠しようがありません。なのに使える役者は一人だけでは、楽
しめませんよお。「役者がいない」から、過剰な演出を施した岩松に私は共感を覚
えます。岩松のホンで、柄本や竹中がいないということはすごく大きいです。そこ
で芝居を変え、演出を変えるのは、「客を楽しませてナンボ」の商売です。(ビル
のオーナーとは違うよなあ、と言ったら怒られるかなあ・・・・ジョーダンっす、でも、
青年団と岩松了を一緒にしてはいけないよお、ましてや三谷をや)。

やっぱさあ、情報はお客が個々に圧縮するんだから、それぞれのフィルターの圧縮
率が全然違うんだから、あまし舞台側で圧縮するのはどうかと思うよ。むしろ過剰
な方がいいぐらいだと思う。様々なメディアの中で、目の前に生身の人間がいると
いう芝居こそがもっとも情報量が多いんだから。カット割りで情報を操作されるこ
とも少ない。フィルター側の自由裁量にかなり任されている。いえいえ、他のメデ
ィアと戦って芝居が生き残っていくためには、単に姿・形や声やセリフだけでなく、
生身の人間が発するパッションこそが膨大な情報となって伝わるんですからね。そ
れこそが、FACE TO FACE でコミュニケートすることが有利である最大の理由なん
ですからさ。

だから、つかの方法論は全く正しいと、小丸は思うわけだ。



熱海殺人事件−妹よ− (93.10)

(下の文章の文責:まねきねこさん)


10/2(土)11:00-13:20 晴れ   両国・シアタ−X(カイ) つかこうへい事務所
  「熱海殺人事件−妹よ−」  作・演出:つかこうへい 大入り

 切な色の女伝兵衛。よわいけど、いいでしょ鈴木聖子。寝ながらも、ほろり。

 配役。謎ってほどでもないんで、役柄も。
 表婦警 /裏部長・木村伝兵衛/朝倉の妹        :鈴木聖子
 表伝兵衛/裏伝兵衛の侍従/舟木の恩師    朝倉万吉 :及川似造  
 刑事・八王子の白バイ警官/伝兵衛の昔の恋人 舟木一夫 :鈴木鉄夫  
 犯人 大山金太郎                   :山崎銀之丞  

 お話し。はげ。長崎五島列島、幻の育毛花 ハイドン。が今回からむ。冒頭、
 おやじはげの朝倉・伝兵衛。はげのやつは罪にならんとかいって、笑いを取ります
 それはそれ。おちゃらけても、熱海は熱海。伝兵衛と舟木。犯人とアイコ。
 男と女。切ない。チクリ。痛くて、胸が熱くなる。
 伝兵衛を女性にしたので、愛憎というか、ドラマが一段と面白い。

 役者。みんないつもの演技。銀之丞、いいです。自信にあふれてます。
 若林ケンは、「なぜか上海」。セクシ−。それと今回、客キスはなしね。
 鈴木聖子・伝兵衛は、弱い。わかってることだけど。でも。ラスト、朝倉との別離
 からモノロ−グは、なるほど女伝兵衛。哀しく、切ない。いいよ。

 終わった外は、雲ひとつなく。悲しいほどの水色の空。(乙女の感傷ねこ)
  東京10/15まで(月曜休演)

 おまけ情報。
 1 94−9(ほかの月もいってたけど)蒲田行進曲 続編 「銀ちゃんがゆく」
   公演。お笑い忠臣蔵、二代目はクリスチャン、広島に原爆を落とす日、おしの
   さん−2・26始末記 が上演予定だそうです。
   最後、銀ちゃん・・の予告編やりました。阿部、春田さんもでてきて、よ−
   わからん盛り上がり。
 2 当日券。 9:30 約25人列 10:00(発売)約40人列 
   通路補助椅子  約22+中央通路(5列目)箱席約15+通路座り 約10
   キャンセル席は、不明。



熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン (94.6)

(下の文章の文責:まねきねこさん)


6/11(土)2:00-4:25PM 晴 両国・シアターX   つかこうへい事務所
 「熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン」 作・演出:つかこうへい    満席

 唄う、またはスポーツ熱海?。阿部さん、笑顔がかわいくて○。動きもね。

 お話し。伝兵衛、金太郎、アイ子が、スポーツ選手。皆、絡まる糸設定。

 設定、なんかうざったいなあ。進むにつれて、気にならないけど。
 お唄、いっぱい。おちゃらけらけらの前半。なんだか無用なガジェット演出
 が楽しい。阿部さん、いー体。立ち姿、かっこい。笑う口元がまた良い。
 喋んないともっとかっこいいのに。と、あんまりな事言う失礼ねこ。

 でも熱海は熱海。平栗さん、銀ちゃん、しっかり泣かしてくれます。
 やっぱ熱海はよいですわ。しかし、すげー変えてあるのね。犯人金太郎は
 最後おまけ扱いみたいだし。伝兵衛は哀し過ぎるし。それはいいけど、終盤
 引き伸ばし長くて・・。集中力続かず、残念ねこ。



飛龍伝'94−いつの日か白き翼にのって− (94.7)

(下の文章の文責:まねきねこさん)


7/28(木)6:30-9:25PM 晴 銀座・セゾン劇場 
「飛龍伝'94−いつの日か白き翼にのって−」作・演出:つかこうへい ほぼ満席

 神林美智子、山崎一平に、また会えて嬉しくて、哀しい。筧さんはいいわ。

 お話し。全共闘女委員長と機動隊隊長、愛しあいながら敵対する二人の悲しさ。

 今回も胸がいっぱいの切なさで、泣いちゃいました。出足が樋渡、山本さんの声が
 どうも届かない(ねこ4列めなのに)。不安。でも、神林美智子、山崎一平の
 ドラマが始まれば、何であろうが引き込まれます。世界は二人のたbノあるのです
 山崎一平のひたむきさは、ぐっとくる。堤泰之氏作「純情波乗少年」のジュンコ*
 とならぶ大好きキャラ(*知らない人すみません。ひどいこと言われてもスピッツ
 みたい、好きな男についていくのよ。明るくね。富田雅子さん、よかった。)
 一部役者に、まどろこしさの残る舞台とは思う。けど、二人が観れればよいねこ。

 石田さんは前評判どうり、すっと声が通る。いい。たおやかな動きもなかなか。
 日が経って、切れが出るといいな。筧さんの出番まだかと、見てたねこ。可笑しく
 て、なかせてくれる。北島さんも、全力投球で気持ちいい。

 ところで、開演6:30。平日だと、辛い勤め人がいるのでは。終演遅くとも、
 7〜8時開演の日があってもいいと思う。(そう言うねこは、会社夏休み中。
 今回は平気なのでした。)


(下の文章の文責:一寸小丸さん)


セゾン劇場「飛龍伝’94」8月24日6時半(3:00')
銀座セゾン劇場 6000円 7/19〜8/27
作・演出/つかこうへい 客780(満員)

90年・富田靖子、92年・牧瀬里穂に続く、3回目のお祭りは石田ひかり。そう、
主役の石田氏は、「とにかく大勢の男達を従えて一人真ん中に立つエンディングをや
りたいの」だそうだ。そんなふざけたコメントを受け入れて、銀座で6000円とっ
て芝居やるんだから、これはもうお祭りだ。2年に一度の・・≠ぇキbレ[

牧瀬との最大の違いはといえば、そりゃあもう「レーザー光線がなかった」ことだ。
んだって今年は、意外や意外、完全な芝居でしたもの。4年前は富田・筧の二人芝居
でした。2年前は男優達による男芝居でした。そして今年、ちゃんとした芝居となり
ました。確かに石田ひかりは、セリフ回しは変だし、手の動きが異常ですけど、でも
充分です。この芝居で最も重要な受け・リアクションが完璧でしたもの。男優達の激
しい攻撃をしっかり受け、一瞬ごとにキチンと反応してました。すごいと思いました。
だもんだから、ちゃあんと芝居となっていました。だもんだから、「なるほど、そー
ゆう話しだったのか」って、ぜーんぶ伝わっちゃいました。驚きぃ。

男優に関しても、みんなうまくなりました。筧・春田は去年から既に良かったでした
が、木下・山本・北島らが、ヒリヒリする芝居をしてくれます。私の好みとしては、
ねずみの木下さんが、美智子を春田に持ってかれる時の卑屈さがとっても良かったと
思いました。あーゆー芝居が好きなんです。

いやあああ、ほんとにできのよい芝居でした。登場人物の心理がコロコロ変化し(そ
れがしっかり伝わるんだ)、「愛しかねーべよ」って迫ってくる迫ってくる。すべて
が本当で、すべてが真剣で、愛しそして傷つける。ぜしとも来年からは、毎年やって
ほしいもんです。

マンプリの吉田学くんが、大勢の一人として出演してました。チケットを取ってもら
ったんですが、6列目の真ん中という最高の席でした。ラッキー。

・・・楽屋にて。
小丸「よっ、よっ・・・吉田ぁぁぁ、おめぇ、ひかりちゃんのおっぱいを・・・」
吉田「あっ、わかりましたぁ?。あれ、俺、あれが俺。えへっえへっえへっ。」
小丸「てっ、てめぇ、このやろ〜、この手か・・・あ、握手しよう。このやろ〜」
吉田「えへっえへっえへっえへっ。」

見終わって「芝居なんだから、客が来なくなるまでやり続けなさい。」



熱海殺人事件モンテカルロイリュージョン (94.6)


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  【 熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン 】 つかこうへい事務所
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不朽の名作、熱海殺人事件。熱海の浜で起きた殺人事件の取り調べをめぐ
る、刑事3人と容疑者の人間模様を描く。このバージョンでは、部長刑事
はオカマ。山形からきた速見刑事は、部長刑事を、モンテカルロでの兄の
謎の死の犯人と目している。ふたつの殺人事件の背後には、オリンピック
にかかわるアマチュアスポーツ選手の悲哀と愛情のドラマが……。とおり
いっぺんに理解されることを巧みに避けながら、感情を直接ゆさぶってく
る迫力は、さすが。婦警役の平栗が好演。部長刑事役の阿部はいま一歩。
======================================================================
6/1(初日)ソワレ            シアターX 6/30まで

《感想》

  ・熱海はいいなあ。(^^)(^^)

  ・内容を知っていても、やっぱりはじめは、「筋を追おう、理解しよう」
   という気持ちがある。そんなたくらみを、この芝居は、せりふやギャグ
   や動きや歌や音楽や照明や、みんな総動員で分断してばらばらにしてく
   れる。それで、惑わされ、動揺する。そして、揺れる殻のすきまからの
   ぞいた無防備な「こころ」に、芝居の断片はばらばらなまま直接うった
   えてくるのだ。くさいだけの芝居、楽しいだけの芝居とは、そこが決定
   的に違うんだと思う。やっぱりすごいぞ、つかこうへい。

・水野婦警役の平栗あつみの長ぜりふのところで、不覚にもちょっと涙ぐ
 んでしまった。なんだか自分でも不思議なんだけど……。この人、早口
 でしゃべると声のリズムがすごくいい。もいっぺんみたいと思った。

・部長刑事木村伝兵衛役の阿部寛は、下手だった。初日で、緊張していた
 のかもしれない。なんといっても、花束でたたくシーンが迫力不足なの
 が悲しい。なんていうか、体全体から出る殺気と色気が足りないんだな
 あ……。でもまあ、魅力はたくさんある人だと思う。なんせ、顔と体に
 めぐまれてるもんね(^^)。がんばってほしい。

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 【熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン】 つかこうへい事務所
  作・演出:つかこうへい
  スタッフ:石井強司 山本能久 山口暁 菅野将機
  出演:阿部寛(木村刑事) 平栗あつみ(水野婦警) 山本亨(速見刑事)
     山崎銀之丞(大木容疑者) 若林ケン(歌のみ)
  1994.6,1-30 両国:シアターX 全席指定(前当2500)
  6/1(水)初日 19:05-21:25 最後列中央より観劇 客入り:満員
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飛龍伝’94



● 当日券情報(ジーンズシート:学生のみ)
  15:00 22人
  所定の32名に達したのは、16時頃だったようです。

● この芝居は、筧利夫のものですね。石田ひかりは、期待外れ
でした。まあ、後ろからで表情がみえなかったということも
あるとは思うのですが。あんまり期待するのも可哀想か。

● 8月に前でもう一度みる予定です。

 1994.7.19-8.27 銀座セゾン劇場 7/29(金)最後列より


 2回目の観劇です。筧の他にも、木下と及川の頑張りが目につきま
した。石田は、かなり余裕が出ているようでしたが、それでもやはり
物足りなく感じました。

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 芝居をみる前に、つかの『娘に語る祖国』を読み、だいぶ影響され
ました。安保闘争という背景にあまり説得力が感じられないと思って
いたのですが、安保の向こうに日韓問題を透かしてみると、ぐっと説
得力が増してくるように思ったのです。今回は、その線で少し。(以
下は、芝居の感想ではなくて、戯曲に関する邪推です。)

 日本人でも韓国人でもないつかは、日本と韓国との間の戦争を、特
殊な目で見つめています。どちらの集団にも属する者であり、同時に
どちらの集団にも部外者でしかありえないがゆえに、視線に情熱と冷
静さとを合わせ持ってしまっているのです。つかの目は、集団の正義
の衝突としての戦争をみつめ、さらにその中に、集団の正義にあやつ
られていく個々の人間の姿をみつめ、さらに、そんな中でも決して完
全にはつぶされることのない、愛と平和を希求する心をみつめていま
す。闘いの悲惨さ不毛さと人間の弱さ醜さを冷静にとらえつつも、そ
れでも消えることのないわずかな灯火を、熱く見つめています。(以
上は、『娘に語る祖国』を読んで感じたことです。)

 つかが自身の生まれつきの立場ゆえに培ったこの視座、この視線こ
そが、飛龍伝を支える視座、視線でもあるのでしょう。

 機動隊と学生の双方を愛してしまう美智子の葛藤は、日本と韓国の
双方を愛してしまうつかの葛藤でもあります。一平と美智子、立場を
違えて闘う二人の間にできた子供は、つか自身が日本人の妻との間に
もうけた子供の姿に重なります。そして彼は、自分と異なる国籍を背
負わせることになった子供に、こう語りかけるのです。本当の革命と
いうのは、集団の正義を超えて、人間として、男と女がより深く愛し
あうことなのだよ、と。そして革命とは、パパとママが愛しあって生
まれた、お前のその美しさのことなのだよ、と。

 「友よ、覚えておいてほしい。かつて、二人がより深く愛し合う
  ”革命”という言葉があったことを!」

 自分のアイデンティティを巡って悩む一平と美智子の息子に対して、
ラストシーンでつかはこう告げているのでしょう。あの闘いは、学生
と機動隊の憎み合いだけではなかったのだ。集団の正義のために闘い
つつも、個々の人間は人間らしさを失ってはいなかったのだ。だから
こそ、こうして今、あの時の敵がこうして集まった。お前の父と母は、
確かに愛し合っていたのだ、と。

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【飛龍伝’94】 作・演出:つかこうへい  すでに終了
   銀座セゾン劇場 1994.8.24 Wed 10列目より
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銀ちゃんが逝く (95.07)

(下の文章の文責:にしかど)


つかこうへい事務所の「銀ちゃんが逝く」は、いろいろ不満な点も
あるのですが、やっぱり観る側の心をぐいぐい揺さぶってくる力は
すごくて、私はちょっとうるうるきてしまいました。「罪と罰」で
は死んでた平栗あつみも、こちらでは大奮闘です。子役がまた泣か
せるし。当日券もだいぶ出てるようですし、チケット持ってない方
も、トライしてみてはいかがでしょう。



(下の文章の文責:まねきねこさん)


7/9(日)2:00-4:30PM 曇 両国・シアターX つかこうへい事務所
「蒲田行進曲-完結編-銀ちゃんが逝く」作・演出:つかこうへい 超満員(250?)

 最前列で観る。剛速球の痛み。ねこは中途でフューズ切れ。平栗さんに花束を。

 お話。映画スター銀ちゃん。落ち目の影。彼の呪われた血。不治の病の娘。奇跡
 をかけた、池田屋の階段落ちの先には・・。
 
 真正面から親子の有り様、問う。5歳の娘にわかるはずない、けど伝えたい母・
 小夏:平栗あつみが圧倒的。剛・直球。どう受けたらいいのか。子供との関わり
 度合で感動ちがうとこ。ねこ、揺すぶられ涙しながらも、とまどう。差別の下敷
 きもそう。不幸知らずの不幸ねこ。

 どうしようもない悲嘆の中、銀ちゃんは小夏への愛を宇宙にうたう。言葉に感動
 する。けど、言葉だけじゃ?。特にラスト。彼女に一輪の花なりとも、抱かせて
 欲しかった。ヤスにしても、小夏を愛しく思う場面が少ないような。殺したいほ
 ど愛してるが唐突に思う。「蒲田行進曲」で既知、親子の比重多のためかなあ。

 いろいろ疑問符あっても、極限にある人達の姿に否応無く感動。力強さはさすが。

 山崎銀之丞、引き締まった演技、いー顔になってきて○。ますます期待。平栗あ
 つみ。動き、台詞まわしがとてもよくて。今までで一番の彼女。吉田学。懸命で
 ヤスにはまってて、○。山崎絵莉。ふと見えた涙が印象的。つか芝居に溶けこん
 でるの、見事。(7/1-30)



(下の文章の文責:一寸小丸さん)


つかこうへい事務所「銀ちゃんが逝く」7月27日(木)7時(2:44')
両国/シアターX 4000円(当日箱馬席3000円) 7/1〜30(34ステ)
作・演出/つかこうへい 03-5814-5170 客

某新聞に、芝居冒頭の20分程「蒲田行進曲」のダイジェストが冗長過ぎるみたいな
評価が出ていたが、大きな間違いだ。あれはダイジェストなどではない。この芝居が
蒲田とは別作品であることを宣言したと意味づけられるものだ。新聞にレビューを書
く個人は、それぞれ得意なジャンルがある。苦手な芝居もレビューしなくちゃならな
いライターさんの苦労が偲ばれる。でもなあ・・・。えっ、小丸さんはどうかって、
あたしゃほらっ、つかこうへい評論家ですから。・・・勝手に決めるか>わし。

役者の活き造りだけが演劇論であるつか芝居は、それを演じる役者によって、別の芝
居となりえる。「蒲田行進曲完結篇」と題された本作品は、確かに80年代初頭の名
作をベースとするものであるが、登場する人物に設定されたキャラクターは全く別の
ものである。同じ倉丘銀四郎を名乗っても、風間杜夫や加藤健一が演じた銀ちゃんと、
山崎銀之丞の銀ちゃんでは全く別ものである。そしてまた、平田満や柄本明が演じた
ヤスと、吉田学が演じるヤスは、ものすごく隔たったものである(小丸は風間 VS 平
田バージョンのみ見ている)。さらに言うなら、根岸季衣と平栗あつみとの差といっ
たら・・・。それは決して力量の差のことではない。役者が持つ個性が違うのである。
そして、山崎・吉田・平栗によって(稽古場で)産み出された関係が、この「銀ちゃ
んが逝く」という差別されるものたちの、ギリギリの生を描く作品を作らせた。絶対
に、80年代蒲田で論じられた「逆説的なマゾヒズム」などという手垢にまみれたコ
トバで形容してはいけない。

つまりさあ、山崎の銀ちゃんは、風間さんみたいにパチーンって破裂しちまっちゃ
っていないのね。イッたっきり兄さんじゃないわけ。相手のコトバを受けとめるや
わらかさを持っている。人間的なの。風間さん人間じゃなかったから。M78星雲
から宇宙の平和を守るためにやってきた宇宙の人だもの。カーク船長はあくまで人
間よね。一方、平田さんはほんとに卑屈で、思わず殴りたくなるタイプだった。い
るでしょう、どこのクラスにも「イジメッコ心をくすぐるタイプ」が。唾を吐きた
くなるやつが。だけど、吉田は違う。時として銀ちゃんと対峙する。銀ちゃんにへ
つらっているけど、本心は違うことが見てとれる。んなやつが、女を押しつけられ
るかいな。いや、押しつけられるはずがない。んじゃ蒲田は成り立たないべ。そこ
には、マゾなんて括ることのできないものが存在する。ネタをばらしますが、なん
とヤスは芝居の最後で、銀ちゃんを刺すんですよ。その刺し方にヤスの意志があっ
たんですからね。すごい展開ですぅ。

もちろん、山本亨にしても春田純一にしても、登場しただけで客の視線を一身に浴び、
その空間を変えてしまうほどの光はない。石丸さんにしても、萩原さんにしても、そ
りゃあ卑怯な登場の仕方でしたし、ネッチネチの喋り方でイヤラシサ百万倍でした。
だけど、山本や春田には、別の意味での・・・マジメさがあります。そんなキャラク
ターになってます。差別されるもの、石もて追われるもののカゲを背負っていて、ワ
キ役に留まらないセリフを喋り、それぞれの場を与えられています。これってつまり、
山本や春田が、山崎・平栗に遜色ない役者であり、1か月以上もワキに置いとくこと
ができないってことでしょう。ってなわけで、山崎・平栗・山本・春田そして吉田に
まで、おいしいシーンが与えられており、「カゲを背負ったもん同士」を形作ってま
した。一人一人の重なりで、場が形成されてゆき、ギリギリに生きるものたちの「愛」
の形が描かれていったのでした。

「ギリギリ」がはやらない現代です。リアリティないです。カゲというのはメタファ
ーですから、あんな設定はリアルじゃない、などと言ってはいけません。「ギリギリ」
と解釈すべきものです。「それでもせいいっぱい生きてるやつ」なのです。無茶苦茶
と形容される生き方をし、まっとーなシアワセは望めず、実際にこの社会では絵にか
いたような不幸に遭遇するのです。それでもかまわないのが彼らなのです。そーゆー
不幸は甘んじて引き受ける覚悟があるのです。それでもせいいっぱい生き倒すのです。

例えばやりまくってるやつとか、回りのやつらにメーワクかけまくったり、不幸に
落としめまくったりしてるやつっていますよね。困ったやつですし、いずれ地獄を
見るわけですけど、それでもそいつがギリギリで生きてるんだったら、私は許せる
と思うんです。愛せると思うんです。

映画の蒲田は平田さんのものでした。でも、芝居の蒲田は風間さんのものでした。女
を押しつけなければならなかった男の悲しさが説得力をもって私を騙くらかしてしま
いました。宇宙の平和を守るため、愛する女を残しM78星雲に帰らねばならない銀
ちゃんに泣けました。みんな戦争が悪いんだ、ってなもんです。誰だって、女を預か
り、立派に階段落ちるに決まってます。でも「銀ちゃんが逝く」では、登場している
人物のすべてに、「おめーら、どうしようもねーな」ってツバを吐くしかありません。
地獄を見て当然だと思えます。それに値する生き方ですもの。関わった人すべてが嫌
〜ぁな気分になるのも当然です。そして、この世の地獄を甘んじて受ける彼らのいさ
ぎよさと、そういう生き方しかできないあいつらの行く末を、私は愛せると思います。

あーゆーのこそを、「生きる」っていうのかもしれません。

さて、芝居の内容を離れ、今回のつかさんの悪だくみについて考えてみます。あれっ
ていったい、どうゆうことなんでしょう。つか芝居は変わりつつありますよ。

例えばオープニングです。ただじゃ始まらないつか芝居。チャイコフスキーかユーミ
ンか、あるいはハマショーかナガブチか、いまならtrfとかハマダもあるな、なん
て考えてたわけです。たら・・・。緞帳は開いている。客電落ちる。舞台明るくなる
と、上手袖より二人の男が話しながら出てくる。・・・ですよ。

とにかくですね、ケレンみがないんです。生系の地明かりで、時おり流れる音楽もB
GM風に小さく静かな音楽が芝居を支えるだけなんです。全く変化がないわけじゃあ
りませんし、かますときはかますのですが、その変化に行くまでが長い。延々、役者
芝居を野放しにして見せているんです。オープニングの二人って、メインの役者じゃ
ないんですからね。それを、舞台前っつらでだらだら芝居させているんです。こんな
の、ちょっと考えられませんよ。

シーンの転換でも、「演出」を避けてます。あれって結局・・・。

二つ考えられます。一つは、役者を育てるための稽古であると。つか復活以来、「幕
末純情伝」にしろ「飛龍伝」にしろ、演出過多でごまかしてきました。あれじゃ、若
手は育ちません。それでも山本や木下といった一本背負える役者がようやく育ちまし
たが、それにしては時間がかかりすぎました。ホンや演出、裏方さんの仕事が受けて
いるのに、役者がその気になってしまってたんじゃないんでしょうかね。やっぱ、素
舞台で、セリフだけで、セリフの摩擦熱だけで維持できなきゃなりません。だけど、
つかの金看板背負った芝居ですから、熱海にしても過去の名声とかありますから、そ
うは落とせませんものね。考えてみると、つか復活以来、過去の遺産を使わずにやっ
たのって、岸田今日子の「今日子」と長与千種の「リング〜」。どっちも遺産は使っ
てないけど、別のもんを使ってるなあ。その意味では、今回の「銀ちゃん〜」も蒲田
の遺産を相続してるんだけど、オープニングの20分で、蒲田と決別したとも言える
わけだから・・・。

もう一つの理由は、やっぱ「次」を考えてのことだと思う。本当につか芝居の役者だ
けで、過去の遺産に触れずに作る「新作」が、そろそろやらないといけない。でも、
今の役者のままだと、おなじみの「つか芝居」にせざると得ない。とりあえず、80
年代初頭の役者のレベルまで持ち上げて、そんで、新しい演出方法をつかさんは狙い
出したのかもしれない。今回のは「稽古」に加え、ハデ演出なしで持たせる芝居を指
向しだしたのかもしれないと考えることができる。たぶん「役者の活き造り」は変わ
らないだろうから、どんなふうにやるのか、楽しみではあるのですけど。

ってなわけで、つかさんは山本で一本書くべきです。吉田も、全く別のヤスでもいい
んですけど、ヤスのしがらみを解いてやった役の方が生きるに決まってます。そろそ
ろ彼らは、過去の遺産がじゃまになりつつあります。90年代後半に即した、ナイー
ブで洗練された感性を持ってしまっている彼らの部分も生かした作品が書かれるべき
だと思います。まわりもそうゆう企画を出してあげればいいのにね。

見終わって「いや、まだ見終わった気はしていない。」


−−−
「つかネタ、ふたたび」

小丸さんは昨日、スピードの出るマックに買い換えたものですから、すべての環境
をマックに移行している最中です。あぶくゼニを無駄につかってます。ですから、
書き込み初心者状態ですので、間違いがあっても許して下さいませ。そのうち慣れ
ますから。

さてつかです。前作「蒲田」と今回の「銀ちゃん」がいかに違ったかについて、音
楽がらみでひとこと言いたい。ま、来年大分で「蒲田行進曲」が復活するらしいで
すが、前作とはまったく違い、ヤスがかっこよくて、銀ちゃんがマゾになるって
つかさんが言ってますから、常に変化し、違うものを作るというつかさんの姿勢は
珍しくもなんともないわけです。「役者次第だが」と言っている通り、そこに集ま
った役者によって「書かされるホン」になっていくのがつか芝居ですもんね。

さて「銀ちゃんが逝く」です。最初の20分で、「蒲田」が再構築されます。そし
てヤスの階段落ちですが、昔の「蒲田」でそのシーンにかかった音楽は、映画と同
様、ストリングスがばんばんきいているハデな盛り上がり音楽でした。映画で、松
坂慶子が金網にすがって泣き崩れるときに、救急車のサイレンに重なってかかって
いた曲でもあったと思います。タイトルは知りませんが、カンドー的な曲でした。

ところが、今回の「銀ちゃん」のそのシーンでかかったのは???。

フランキーゴーズトゥハリウッド(以下FGTH)です。すごい選曲です。FGTHっつ
ったらアレですよ。トレバーホーンですよ。デパルマのボディダブルでハデに使わ
れたグループです。ミュージックビデオには、米ソの大統領と書記長(当時、誰で
したっけねえ)がリングの上で殴り合いをする、なんてのも作ってましたよね。つ
まりその、FGTHの曲のイメージは「戦い」であると言えるでしょう。今回の「銀
ちゃんが逝く」は、ヤスの階段落ちによって、その地獄の戦いのスタートが切られ
たと暗示しているようなもんです。なんとまあ、直接的なんでしょうか。

さて、そんでもって銀ちゃんの階段落ちです。今回の「銀ちゃんが逝く」では、銀
ちゃんが階段を落ち、死ぬ設定です。銀ちゃんが落ちていく時に使われたのは、あ
れは何だったんでしょう。静かなピアノかなんかのBGMに重なって、大きな音のノ
イズが被さってました。私には、そのザーって音が、歓声に聞こえました。あるい
は群衆のシュプレヒコールにも。地獄の終わりであるとともに、生を全うした銀ち
ゃんへの喝采の響のようにも感じました。あのノイズの使い方は素晴しかったです
ね。



熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン (95.10)

(下の文章の文責:まねきねこさん)


10/10(火)7:00-9:25PM 晴 渋谷・PARCO劇場 つかこうへい事務所
 「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」作・演出:つかこうへい
 6列目(C)下手より 客席満員(460人 階段座布団は今回なし?)

 お話は略。この版は一昨年、昨年から3回目。木村伝兵衛・部長刑事(阿部寛)
 がオカマ。虐げられたあいこと大山のオリンピック補欠選手の殺人事件+伝兵衛
 と元恋人の殺人事件の二つの捜査が展開するといったもの。

 モンテは長いよ。歌いながらの捜査、曲増えたような。てれてれしてるように感
 じて、もうろうとしてくるねこ。後半、あいこと大山の芝居で、気をとり直し。
 平栗あつみ、山崎銀之丞の二人は、切れとすごみが増したみたい。泣かせる。

 冒頭の伝兵衛・宇宙に一人きり演出は、今回からか。カリスマ性持たせようとい
 うのかしら。大山登場の場内演出なし?。舞台近くまで、ただ歩く。ものたんな
 い。平栗さんの見せ場少ないのは、モンテだからしょうがないのか。若林ケンの
 唄は、変わらずセクシー。地方刑事・速水の山本亨は、安心してみれる。阿部さ
 んが、平栗、山崎の二人に対すると弱く感じてしまう。がっちりした体と立ち姿
 は○なのに。愛敬もあるのに。押しの強さと凄みがもっとほしいなあ。
 (10/1-15 18ステ)


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にしかど(nskd@enpe.net)